
近年のデジタル化の進展により、企業は顧客一人ひとりに向けた情報やサービスの提供が求められるようになりました。そのような背景もあり、顧客のニーズや属性に合わせたマーケティングの手法として「パーソナライズ」が注目されています。
パーソナライズを活用することで、顧客満足度やコンバージョン率(CVR)の向上が期待できるでしょう。この記事では、パーソナライズの概要や具体例、メリットデメリットを解説します。
この記事でわかること
- パーソナライズの概要とメリットデメリット
- パーソナライズが具体的にどのようなシーンで使われているか
- パーソナライズの導入にあたってのポイント
目次
パーソナライズとは?意味と重要性
パーソナライズ(Personalize)は「個人向けにする」を意味する言葉であり、マーケティングにおいては顧客一人ひとりの属性や好みにあわせてサービスや情報を提供することを指します。
パーソナライズの身近な例として、動画投稿サイトで過去に閲覧した動画と類似する動画がおすすめ欄に表示されることがあげられます。
近年のWebサービスの充実により、顧客は多くの情報やサービスから、自分にとって最適なものを選んで購入するようになりました。そのため、従来のマス向けのアプローチよりも、一人ひとりの行動パターンや嗜好を基にパーソナライズされたアプローチの方が、効果を発揮する状況になっています。
なぜパーソナライズ化が重要なのか
スマートフォンが普及した現代において、ユーザーが取得できる情報量は非常に多くなっています。しかし、不要な情報も目に入りやすくなったことから、選択や意志決定が難しくなりました。
また、価値観の多様化により、今までのような不特定多数を対象とした情報・サービスではニーズを満たすことの難易度も上がっています。
こうしたユーザーを取り巻く環境の変化を背景に、パーソナライズによって個別のニーズに最適化したサービスや情報提供の重要性が高まっています。
カスタマイズ・レコメンドとの違い
パーソナライズは、ユーザー一人ひとりに合わせて調整するという意味ですが、ほかにも似たような言葉として「カスタマイズ」と「レコメンド」があります。これらの言葉は、それぞれ「誰が実施しているのか」「どの情報をもとにしているのか」が異なります。
パーソナライズでは、顧客の嗜好や行動パターンを分析し、サービス側がおすすめする情報を表示します。
カスタマイズでは、顧客自身が受け取る情報を設定できる手法です。例えば「キッチン用品の情報が欲しい」と顧客が設定すれば、キッチン用品の情報が表示されるようになります。
レコメンドは、顧客個人の情報ではなく、その他多数の顧客の傾向をおすすめとして表示する手法です。例えば、衣類用洗剤と柔軟剤をセットで買う人が多いのであれば、衣類用洗剤を購入しようとしている人に対して、柔軟剤の情報を表示します。
パーソナライズの具体的な手法

パーソナライズの具体的な手法としては、以下のようなものが挙げられます。
- パーソナライズド広告
- Webサイト・LP
- SNS
- パーソナライズDM・メール
- パーソナライズ商品
いずれも売上アップやブランドの認知向上など目的に活用されています。
それぞれの手法について詳しく見ていきましょう。
パーソナライズド広告
ユーザーの行動履歴や属性に沿って最適な情報やサービスを表示する広告をパーソナライズド広告と呼びます。
属性とはユーザーが住んでいる地域や性別・年齢などが含まれ、行動履歴には過去の検索語句やサイトへのアクセスなどがあげられます。
例えば、不動産情報を検索したユーザーに対して関連性の高い情報として住宅ローンの広告を表示させることが可能です。
Webサイト・LP
WebサイトやLPは、パーソナライズの活用によって、新規や再訪で表示するコンテンツが変えられます。ほかにもポップアップなどを利用して、閲覧頻度の高いユーザーにのみクーポンを表示することも可能です。
さらに、ユーザー属性に応じて訴求を変えたLPを表示させることもできます。このようにLPやWebサイトにパーソナライズを活用することで、ユーザーに合わせた情報を提示でき、CVRの向上や直帰率の減少に役立ちます。
SNS
X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSでは、「いいね」やコメントなどから興味があるコンテンツが表示される仕組みを採用しています。また、設定した個人情報やフォローしている人のデータをもとに広告や「知り合いかも」といった情報が提示されますが、これもパーソナライズによる機能です。
パーソナライズDM・メール
顧客に合わせた内容やタイミングでDM(紙)や電子メールを送付することで、開封率やクリック率の向上を図ることが可能です。
例えば、ECサイトのかご落ちユーザーに対する購入の後押しや、年齢に合わせたコンテンツ(健康など)の提供、前回購入した商品からのおすすめ商品の紹介などがあげられます。
パーソナライズ商品
パーソナライズ商品とは、商品自体が顧客一人ひとりのニーズに合わせてデザインされたものです。化粧品や健康食品・ファッション・インテリアなどを中心に展開されています。
例えば、髪質に合わせたヘアケア商品、肌質に合わせた化粧水、目的や好みに合わせたカスタムミール、体型に合わせたTシャツなどがあります。いずれも事前に診断をして、その回答結果に応じてパーソナライズするケースがほとんどです。
このように顧客ごとにパーソナライズされた商品は、一つひとつがユーザーに向けたオリジナル商品となるため、競合と比べて優位性が高く、顧客を奪われにくいことが特徴です。
パーソナライズのメリット・デメリット

パーソナライズを活用して成果につなげるためには、メリットとデメリットの両方を把握しておく必要があります。ここでは、パーソナライズのメリット・デメリットについて、それぞれ見ていきましょう。
メリット
パーソナライズには主に以下のメリットがあげられます。
- 効率的なマーケティングの実施
- 既存顧客との信頼関係構築
- 潜在顧客へのアプローチ
- コンバージョンの獲得
それぞれどのような効果が得られるのか、詳しく見ていきましょう。
効率的なマーケティング施策が実施できる
パーソナライズを活用することで、効率的なマーケティング施策の実行が可能です。例えば、顧客の年代・性別・嗜好・購入した理由など、顧客の詳細情報を収集し蓄積していくことで「不特定多数の顧客」ではなく「一人ひとりに焦点を当てた個客」を知ることに繋がります。
それらをデータベースとして検証を繰り返すことで顧客情報の精度が高まり、さらに効率的なマーケティング施策の策定・実行ができるようになります。
既存顧客と信頼関係を構築できる
パーソナライズにより、既存顧客との信頼関係をさらに高めることが可能です。顧客一人ひとりの志向・行動・要望に合わせて、提供する情報やコンテンツを変えることで、顧客は「自分のことをわかってくれている」「特別に扱ってもらえている」という、特別感を覚えます。
これが顧客満足や信頼となり、離反防止やLTVの向上につながります。
潜在顧客へアプローチできる
パーソナライズは、優良顧客だけでなく潜在顧客にもアプローチできます。これはユーザー自身が把握していない潜在的なニーズに対しても同様です。
例えばECサイトならば、過去の購買履歴に関連する類似商品をおすすめすることで、ユーザーがこれまで自分の気づかなかったニーズを呼び起こすことで、認知拡大や売上アップにつなげられるでしょう。
見込み顧客をコンバージョンに有効なページに導く
パーソナライズの活用は既存顧客だけではなく、見込み顧客にも有効です。例えば、Webサイトなどのオウンドメディアに見込み顧客が流入してきた場合において、顧客の状況に応じてパーソナライズ化したポップアップを表示させることも可能です。
初めて訪問してきた顧客には「何かお困りですか?」と案内し、2回目以降は「こちらの資料がおすすめです」といったように、顧客の属性・履歴に合わせて自動接客が行えます。このように、オウンドメディアをパーソナライズ化することで、新規顧客の獲得(リードジェネレーション)から、顧客の育成(リードナーチャリング)まで一貫して行うことが可能です。
休眠・解約を防止できる
パーソナライズによって必要とする情報を適切に提示できれば、顧客の離脱防止にも役立ちます。
例えば「解約される機会が多いタイミング」を分析し、そのタイミングが訪れる前にアクションを起こすことで、顧客の興味関心をひいて解約も引き止められるでしょう。
また、常に顧客から注目してもらうためにも、購入頻度に合わせて顧客が好みそうな商品やサービスを厳選して発信すると、休眠顧客の掘り起こしや優良顧客の獲得にもつながります。
デメリット・注意点
パーソナライズのデメリット・注意点には以下があげられます。
- 取得情報の偏り
- 見たい情報が必ず表示される訳ではない
- 変化に対する柔軟な対応が求められる
- SEOへの悪影響
それぞれ、どのような影響があるのか見ていきましょう。
ユーザーの取得情報に偏りが生じる
パーソナライズは、ユーザーに最適化された情報を提供できることが強みですが、逆にいえばそれ以外の情報は提供されなくなる恐れがあります。毎回同じような情報が表示されると、ユーザーが「情報が抑制されている」と感じ、不信感を抱く可能性があるのです。この場合利用満足度の低下にも繋がり、顧客離れの要因にもなりかねません。
ユーザーの見たい情報が必ず表示される訳ではない
パーソナライズは顧客の趣味嗜好・行動・属性といった、詳細なデータをもと提供する情報が変化しますが、その情報が必ずしも顧客が望む内容であるとは限りません。
人の好みや興味関心は毎回同じではなく日々変化していくもの。ユーザーの変化を察知できず、いつまでも同じような情報を提供し続けていては、顧客満足度の低下や顧客離れの要因にもなります。高い精度を維持していくためにも、定期的なユーザー情報の更新や検証が必要です。
ニーズの変化への対応が必要
パーソナライズでは、リサーチで得られた情報に基づき顧客が現在「何を求めているか」を予測しますが、顧客が求めるものは日々変化します。
特にWeb上には多くの情報があり、商品も豊富に展開されていることから、ニーズの変化も顕著です。
ニーズの変化を無視したまま商品やサービスの提供を行うと、正しい効果を得られないばかりか顧客の離脱にもつながりかねません。
パーソナライズを活用して成果につなげるには、パーソナライズをしただけでは満足せず、常にユーザーが求める最新のニーズを捉えた施策の実施が求められます。
SEOに悪影響を与える可能性がある
Googleをはじめ多くの検索エンジンでは、多くのユーザーが知りたい検索ワードに関するコンテンツが上位表示される仕組みを採用しています。
SEO対策に基づいたコンテンツはキーワードを意識して制作されるため、個別のユーザーに対して情報を提示するパーソナライズは、必ずしもSEOに良い影響を与える訳ではありません。
場合によっては悪影響を与える可能性もあるため、SEO対策とパーソナライズを並行して進める際は、それぞれのバランスが求められます。
例えばページ内容はSEOを意識しますが、ポップアップなどでパーソナライズ化を図る方法があげられます。
パーソナライズで失敗しないためのポイント

パーソナライズで失敗しないためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 都合の良い憶測で進めない
- 自社サービスの特徴を理解する
- PDCAを継続的に回す
都合の良い憶測で進めない
仮説と憶測は、似て非なるもの。仮説は十分なデータや裏付けをもとに立てられますが、憶測は根拠が薄い思いつきです。特に、過去の経験や勘によるものは、都合の良い解釈が含まれている場合もあります。データ(数字)は事実ですので、パーソナライズを行う際はデータをもとに分析・検証を進めるようにしましょう。
自社サービスの特徴を理解する
すべての商品・サービスにパーソナライズが有効とは限りません。例えば、Amazonやメガネスーパーのように、種類が豊富で商品数も多い場合はパーソナライズ施策は非常に有効ですが、反対に商品数や選択肢が少ない商材の場合はパーソナライズは効果を発揮しない可能性があります。
自社のサービスにとってパーソナライズは有効な手段であるか、他社分析も含めて検討するとよいでしょう。
PDCAを継続的に回す
パーソナライズはPCDAサイクルを継続的に回すことで効果が発揮されます。
その際に、時間を掛けて大きな改善をするよりも、素早く小さく改善することが重要です。何が正解かはやってみないとわかりません。小さい改善をたくさん試すことで、自社独自のノウハウが蓄積されていきます。
WebサイトのパーソナライズはTETORIで簡単に実施可能
PCやスマホで情報収集や購買活動を行うことが当たり前となった昨今、顧客ごとに注目して情報やサービスを提供するパーソナライズの重要性が高まっています。
パーソナライズを導入して効率的にマーケティングを行うには、事前の分析や仮説・検証の繰り返しが重要です。
TETORIを利用すれば、効果的なパーソナライズ施策を簡単かつリーズナブルに導入できます。その後の効果検証や改善施策もレポートのデータをもとに実施できるため、 パーソナライズの活用を検討されている方は、ぜひTETORIの導入をご検討ください。
